世の中にない何かが生まれる時。
始動

1995年。オーニットは高性能オゾン発生素子を開発した。温度や湿度などの外部環境に影響されにくく、安定的にオゾンを発生させる新しい発想の発生体だ。革命的と言われたその技術の誕生により、オーニットはオゾン業界のトップ企業に躍り出る。
その後、自社製脱臭機「剛腕」が、最強の脱臭機としてテレビ番組にとりあげられるなど、一般にも徐々に知られる存在となっていく。
営業責任者の池奥はこう言う。「高性能が定着し、当社の知名度が広まった頃には、市場は既に次の“何か”を求めていました。その要望に応えられなければトップ企業とは言えない。そんな危機感が社内にはありました」
既存製品の改良版では意味がない。今までにない、業界が驚く新しい“何か”…。
2011年。暗中模索を続けるなか開かれた定例の技術会議の席で、ある社員がつぶやいた。
「オゾンを泡に閉じ込めてみたらどうでしょう」
そのつぶやきは会議に出席していた技術顧問の佐賀大学名誉教授、岡山工業技術センターの技術者からも賛同を得る。
「それまでオゾンは、ガスと水の2タイプしかありませんでした。そこにフォームという新しい選択肢が生まれる。トップ企業としての存在感を示せるいいチャンスだと直感しました」(池奥)
こうして、誰もが待ち望んだ新製品の開発がスタートした。

池奥 誉志也

営業本部長・執行役員
営業責任者として営業部を統括するとともに、大手電機メーカーとのOEM提携に尽力。大手企業と渡り合える技術力・対応力の向上を目指す。


苦悩
平垣 圭介

オゾンフォーム開発プロジェクトリーダー。
今回初めて一連の製品開発業務を担当。現在、次の一歩を進めるために、また新たなプロジェクトに挑む。

プロジェクトリーダーに抜擢されたのは、当時32歳だった平垣。「改良版の開発に携わったことは何度もありますが、ゼロから新製品を開発するというのはオゾンフォームが初めて。何をどうしたら良いかわからないまま、まずはスーパーでハンドソープを買ってきました(笑)」(平垣)
泡の出る構造はすぐに理解できた。オゾンと相性がよく肌にやさしい界面活性剤も探し出した。開発は順調に進んでいく。
「営業としてはユーザーの使用感に非常にこだわりました。手洗い用に的を絞って開発を進めていましたので、手に取った時にもっちりとした感触があり、泡の“もち”の良い気泡。納得できるまで何度もNGを出し続けました」(池奥)
しかしその実験途中、思わぬ落とし穴にはまる。フォーム状のオゾン濃度を計測する機械が存在しないのだ。オゾン水、オゾンガスは専用の計測器で簡単に測れる。では計測器のない泡の濃度はどうやって測るのか。
「技術顧問から『KI法』という計測方法を教えて頂きました。化学分析によってオゾン濃度を測定する方式です」(平垣)
もともと電子系出身である平垣には化学実験の経験がない。そのため岡山工業技術センターに通い、KI法を一から学ぶこととなる。
大きな回り道だった。


誤算

ようやくオゾンフォームの濃度計測が可能になり、理想の気泡づくりの実験が再スタートする。すると気泡とオゾン濃度の関係について新たな事実が見つかる。
「気泡が小さければ小さいほど濃度が高いということがわかりました。つまり私たちが目指すもっちりした泡は、効果も高いということが証明されたんです」(平垣)
そして何度も試作機を作り改良を重ねた結果、気泡径0.1mmの理想の泡が完成した。
完成した泡のオゾン濃度を計測してみると想定の3倍。予想以上の殺菌効果が期待できる、はずだった。
平垣の研究を常に見守ってきた技術部責任者である中西は当時をこう語る。「殺菌効果を示す数値は予測を遙かに下回っていました。研究が終盤に差し掛かっていただけに、平垣も頭を抱えていましたね」
中西は、オーニットがオゾン事業に着手したときからの技術者で、ほとんどの製品開発に関わってきた人物。そしてこのプロジェクトに平垣を抜擢した張本人だ。
「新製品の開発は苦難の連続です。しかし、その苦難からしか生まれないものがある。それを若手技術者に早期から学んでもらいたいと考えました」
ゴールが見えた矢先の誤算。プロジェクトは終盤に最大の山場を迎えた。

中西 優

技術部長・執行役員
オゾン事業発足時より製品開発業務に携わり、オーニットの研究開発力の礎を築いてきた。自身の経験を踏まえ、現在若手技術者育成に力を注ぐ。


出発
ミーティング 世界初、オゾンフォーム。

菌がオゾンフォームに接したとき、泡の中にあるオゾンガスによって殺菌される。接点が多ければ多いほど殺菌効果は高い。それなら「泡を流動させれば良いのではないか」平垣はそう仮説を立てた。
手洗いはごしごしと手を動かすことで、常に泡が流動している状態。それを再現する計測方法を試みる。
「仮説通り、流動させることで当初想定していた通りの効果が計測できました。やっと辿り着けたと感じた瞬間です」(平垣)

オゾンフォームがつくりだす泡は、水やガスにはできなかった「オゾンを持ち運ぶ」ことを可能にした。また、オゾンを泡に閉じ込めたことで高濃度のオゾンを一層安全に使用できる。
「他社に先駆けて開発できたことで、オゾン分野のトップ企業として再度技術力を示せたと思っています。」(池奥) 「この技術をさらに応用し、また新たな”何か”を生み出していきたい。オゾンそのものもまだ謎の多い物質。それだけに無限の可能性を秘めています」(中西)

ゼロをイチにする、その苦労と達成感の大きさを体験した平垣をはじめとする若手技術者たち。彼らはこれから、また次の「イチ」に挑んでいく。